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小児 喘息
アレルギーによって気道が炎症を起こして狭くなり、呼吸が苦しくなる発作をくり返す疾患です。発作時には、せき、たん、ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸音(喘鳴・ぜんめい)、呼吸困難が起こり、息を吸うよりも吐くときのほうが苦しくなります。ダニなどのアレルギーを起こす原因物質がはっきり特定できるアトピー型と、原因物質が特定できない非アトピー型があります。
ある特定の食品がアレルギーを引き起こし、喘息の発作を起こすことがあります。とくに乳幼児に多くみられ、卵、牛乳、大豆、米、小麦、そば、エビやカニ、サバなどの背青魚が主な原因となっています。大人の場合は、そばや小麦製品が原因となることが多く、防腐剤や着色料など食品添加物でも起こる場合があります。食品が発作に繋がることは比較的少ないのですが、これらが特定される場合はアトピー型の原因になります。
アレルギーの原因となる物質を吸い込んだり、その物質が皮膚に付着したりすることで、喘息の発作を起こすことがあります。主な原因物質は、家の中のチリやホコリ、ダニとその死骸やフン、カビ、ペットの毛や尿、スギやヒノキ、ブタクサ、ヨモギなどの花粉があります。これらもアレルギー物質を特定できるので、アトピー型の原因です。
過労や過度のストレスを感じると、自律神経やホルモンの乱れによって気道が収縮し、喘息の発作を起こしやすくなります。溜まった疲れやストレスが引き金となって、大人になってから初めて発症するケースも増えています。またこれらの原因以外にも、風邪やインフルエンザなどの感染症や飲酒、運動が喘息の誘因になることもあります。
日常生活のちょっとした刺激が引き金となって、喘息の発作を起こすことがあります。例えば冷たく乾燥した空気や気温差、雨天などによる低気圧、タバコの煙、排気ガス、工場の排煙などで汚染された空気などです。なかでもタバコは一酸化炭素やニコチンをはじめ、200種類以上もの有害物質が含まれているため、気道の粘膜の炎症を促進させ、喫煙する人はもちろん周囲でその煙を吸う人も喘息の発作を引き起こしやすくします。
住宅の新築やリフォームに使用した建材や壁紙などの内装材、接着剤、塗料などの揮発性の有機化合物による室内の汚れた空気を、吸い込むことが原因となって喘息の発作を誘発したり、悪化させたりすることがあります。また化粧品、香水、芳香剤の成分や強い匂いが刺激になって、喘息発作の誘因になることもあります。
アスピリンをはじめとして、頭痛や生理痛のときに飲む多くの解熱鎮痛薬や、それらの成分を含む風邪薬などによって、喘息の発作が起こることがあります。大人に多くみられますが、子どもの場合もアレルギー症状が起きやすくなります。
小児の気管支喘息の約9割がアレルギーの原因物質が特定できるアトピー型で、主にダニとその死骸、フンなどのハウスダストが原因となっています。発症には生まれながらの体質が大きく関係し、多くが1~2歳から始まります。約7割は大人になるまでに良くなりますが、アレルギー体質の子どもの多くは、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などを次々に発症する傾向があります。
成人の気管支喘息の約3割が非アトピー型で、小児の気管支喘息からの移行や再発よりも、大人になってから初めて発症するケースが多くみられます。過労やストレスが引き金になることから、とくに仕事や家庭での責任が重い40代から60代が成人の気管支喘息の発症のピークになっています。風邪をこじらせたり、加齢によって免疫力が低下したりして引き起こされる場合もあり、現在では小児よりも成人の気管支喘息のほうが多くなっています。
1カ月以上たんのない乾いたせきが続く、寒暖の差やタバコの煙などでせきが出やすい、夜中から明け方にかけてせきが出やすいなど喘息と似た症状がありながら、ゼイゼイ、ヒューヒューという喘鳴はなく、たんがほとんどからまない状態をせき喘息といいます。この疾患には、風邪薬やせき止めの薬は効果がありません。近年増加傾向にあり、放置すると約3割が喘息に移行します。
アスピリンなどの消炎鎮痛薬の服用によってその直後から1時間ほどの間に誘発される喘息です。アスピリン以外でも同じ薬効をもつ消炎鎮痛薬であれば、どの薬でも発作の危険性があります。男性に比べ1.5倍も女性に多く、大人の喘息の患者さんの10人に1人はみられます。アスピリン喘息は慢性鼻炎や慢性副鼻腔炎などを合併している場合が多く、喘息症状が重症の人に多くみられるという特徴があります。
走ったり階段を上ったりする運動や、笑う、叫ぶなどの動作がきっかけになり、喘息発作を起こす場合があります。大人より子どもに多く、運動した数分後にゼーゼーして呼吸困難が起こります。これはほとんどの場合20~30分程度で自然に治まりますが、喘息の治療が不十分なときに起こりやすいのが特徴です。
喘息の発作は、季節の変り目、気温や気圧などが急激に変わるとき、深夜・明け方によく起こります。その他、運動や過労、風邪、月経が引き金になる場合もあります。発作が起きた時間帯やそのときの行動、食べたもの、精神状態などを記録しておき、自分がどんなときに発作を起こしやすいかを知っておき、あらかじめ対処しておくと、喘息の発作を防げることも少なくありません。
発作が起こる前に、何かしらの異変が起こることがあります。大人の場合は、疲労感、たんをともなわない乾いたせき、微熱、のどから胸の上部の違和感、くしゃみ、鼻水などで、乳幼児の場合は、ぐずぐずして機嫌が悪くなったり、落ち着きがなくなったり、涙目になる、熱が出るなどの症状があらわれます。このような前触れを見逃さず、体を休めて早めに薬を飲むなど対処することが大切です。
ダニやホコリ、ペットの毛、花粉、特定の食品などのアレルギーの原因物質や、汚れた空気、タバコ、香料、塗料など、気管支を刺激して喘息の発作を誘発する原因を、日常生活の中からできるかぎり取り除きましょう。とくに最もアレルギーを引き起こしやすいダニの繁殖を防ぐために、室内や寝具などをいつも清潔にし、こまめに換気することが大切です。
疲れやストレスは、喘息の発作の引き金になるだけでなく悪化の原因にもなります。喘息の発作を防いだり、悪化させないためには、疲れているときは無理をせず、十分に休養することが大切です。また、ストレスは早めに解消するように心がけ、少しでもリラックスできる時間をもちましょう。
日本人にはアルコールの分解酵素をもつ人が少ないため、体が処理しきれなかった物質が刺激となって、喘息の発作を誘発しやすい人が多いといわれています。とくに疲れやストレスが溜まっているときにアルコールを飲むと、より発作が起こりやすくなりますので、飲酒は控えるようにしましょう。また、タバコの煙やにおいの刺激によって発作が誘発されますので、禁煙することはもちろん、他人の吸うタバコの煙を吸い込まないように気をつけましょう。
風邪やインフルエンザにかかると気道の粘膜が炎症を起こし、より過敏になります。そのため、喘息の発作が起こりやすくなるだけでなく、細菌などの二次感染に見舞われやすく、肺炎などを起こし、全身の状態が悪化する場合もあります。風邪やインフルエンザが流行しているときはなるべく人ごみを避け、出掛けるときはマスクをしましょう。また、外出から帰ったら、手洗いやうがいを徹底する習慣をつけましょう。
喘息の発作には、激しいせき込みや喘鳴がなく、たんが多く出たり、胸の痛みや息切れ、息苦しさだけがあらわれることもあります。喘息の発作がおさまらないときは迷わず救急診療を受けましょう。また発作がおさまっても、風邪が長引く、せきが止まらない、たんが普段より多いなど、気になる症状があるときは、呼吸器科やアレルギー科など、喘息の専門医を受診しましょう。
喘息のように、せきやたんが出る疾患は少なくありません。肺炎などのように高熱が出て、膿のような色のたんが出る場合は見分けがつきやすいのですが、肺がん、心臓喘息といわれる肺水腫、近年増加している百日咳、早朝にのどの辺りに不快感が出る逆流性食道炎など、まぎらわしい疾患があります。たんに血液が混ざる、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のように体を動かしたときにだけ呼吸が苦しくなるなど、症状は医師が診断するときの重要なポイントになります。せきの出る時間帯やたんの色、発熱、胸の痛み、息苦しさなどの症状を、問診のときにきちんと伝えられるようにしておきましょう。