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全身 悪寒(おかん)
悪寒とは、発熱の初期に起きる、体がゾクゾクしたり、ガタガタ震えるような病的な寒け(さむけ)のことです。症状が強い場合は悪寒戦慄(おかんせんりつ)ともいいます。悪寒の後には38℃以上の高熱が続くことが多くあります。
強い毒素を持ったウイルスや細菌などの感染による刺激や、体内の免疫機能の活性化による刺激などで悪寒をともなう高熱が出ることがあります。
まれですが、広範囲のやけどや放射線などの物理的な刺激、薬物などの化学的な刺激などによって悪寒をともなう高熱が出ることがあります。また、悪性腫瘍や膠原(こうげん)病でも悪寒をともなう高熱を起こすことがありますが、これらはインフルエンザなどの感染症のように突然に起こることはありません。
肺炎や腎盂腎炎(じんうじんえん)、胆嚢(たんのう)炎、虫垂炎(盲腸炎)によっても悪寒をともなう高熱を起こすことがあります。これらの疾患では、お腹や背中、腰に激しい痛みがあらわれたり、呼吸が苦しくなるなどの悪寒や高熱以外の症状をともないます。
普通感冒と呼んでいる風邪は、せきやくしゃみ、のどの痛み、鼻水などが主で、高熱や寒けが起こることはそう多くはありません。しかし、中には重い咽頭炎を起こし、高熱や悪寒、倦怠感、筋肉痛、頭痛をともなうものもあります。
インフルエンザウイルスによって起こり、全身の筋肉痛、高熱、頭痛、鼻水、くしゃみ、のどの痛みなどがあらわれます。インフルエンザは、急速に39℃前後の高熱とともに筋肉痛などの全身症状が出るのが特徴です。発熱はときに40℃以上にもなることがありますが、その際に全身がぞくぞくするような悪寒を引き起こすことがよくあります。
ウイルスや細菌が肺に侵入し、炎症を起こし、38℃以上の高熱が1週間以上続きますが、高熱の前に悪寒を感じることがあります。風邪をこじらせたり放置していることが原因の一つです。呼吸が苦しくなることもあります。体力が落ちている人や、免疫力の弱いお年寄りに多くみられる二次感染です。
細菌やウイルスに汚染された食べ物や飲み物を摂取することによって下痢や吐き気、嘔吐、発熱などの食中毒症状を起こします。発熱にともなって悪寒を感じることがあります。食中毒を起こす菌は、いくつかありますが、とくにサルモネラ菌は、高い熱が出ることで知られており、全身がぞくぞくとする悪寒を感じることも少なくありません。
腎盂や腎そのものが、細菌に感染して起こります。高い熱が出やすく、発熱にともない悪寒を感じることが少なくありません。また、尿の濁りや血尿、背中から腰にかけての痛みや吐き気、嘔吐などがあらわれたり、排尿時の痛みや尿の回数が増えることもあります。下半身の冷えが主な原因になるため、下半身の冷えに悩む女性に多くみられる疾患です。
胆嚢にできた結石によって胆嚢が詰まり、これに細菌感染が加わることで胆嚢が炎症を起こしている状態です。みぞおちから肋骨にかけて激しい痛みを感じることが大きな特徴です。悪寒とともに38℃近い発熱が出て、吐き気、嘔吐などの症状もあらわれます。胆石は暴飲暴食や、脂肪分の多い食事をとった場合に発症しやすいいといわれています。
盲腸の先についている虫垂に炎症が起こる疾患で、盲腸炎とも呼ばれます。突然急激な腹痛が起こると同時に、37~37.5℃くらいの微熱が続き、吐き気や嘔吐をともない、発熱にともなって悪寒を感じることがあります。腹痛は、最初からへその右斜め下あたりが痛む場合と、みぞおちから徐々に右下腹部へと痛みが移行していく場合があります。
悪寒を引き起こす発熱は、ウイルスや細菌による重い感染症が主な原因となります。感染症の予防には、規則正しい生活習慣や手洗いなどによる予防が中心となります。
悪寒を感じるときは、発熱が起こることが予測されますから、安静にすることが大切です。室温を上げることで悪寒が治まるわけではありませんが、悪寒を感じたときには室温を上げたり厚着をしたり、温かい飲み物を飲んだりして、体を冷えから守るようにしましょう。
熱が出てきた場合、一時的に熱を抑えるために、アセトアミノフェンなどを配合した解熱鎮痛薬を服用すると良いでしょう。
悪寒の原因は、さまざまです。長引いたり、高い熱が出たときには、主治医を受診しましょう。主治医がいない場合は、内科を受診すると良いでしょう。しかし、悪寒や高熱に加え、激しい頭痛や意識障害、全身痙攣、呼吸困難などの症状があるようなときは、すぐに救急医療機関で診察を受けましょう。
発熱初期に起こる悪寒に加えて身震いや震えが起こることを、悪寒戦慄(おかんせんりつ)といいます。これは、筋肉を動かすことによって体温を上げようと、脳からの指令が出ている状態です。痙攣も同じように震えているように見えることがありますが、痙攣は筋肉が極度の緊張状態になることで、震えとは違うものです。