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口・鼻・のど 出血が続く
出血を止めるには、血液の中にあって血を固める役割を果たす血小板と凝固因子、そして血管壁の3つが働きます。ぶつけた覚えがないのにあざや内出血が増えていたり、鼻血や歯ぐきからの出血がいつまでも止まらないときには、止血の仕組みに異常が起きている可能性があります。
けがをすると皮膚の細胞がこわれ、血管が破れて出血します。会社、学校や家庭でのけがによる傷は浅いものが多く、太い動脈に達しない場合がほとんどです。こうした出血は、通常であれば傷口を押さえることによって止血できますが、傷口が深かったり広かったりして、太い動脈の血管を傷つけていると止血できない場合があります。
動脈を傷つけた場合の出血を除き、一旦出血すると血が止まりにくくなる原因として、さまざまな疾患が考えられます。血小板の異常による白血病、血小板減少性紫斑病、凝固因子の異常による血友病、血管の壁がもろくなるシェーンライン‐ヘノッホ紫斑病、壊血病などがあります。
歯ぐきからの出血の多くは歯周病や口内炎によって起こります。しかし、歯磨きなど歯ぐきへの刺激がないのに出血が続く場合には、白血病の可能性が疑われます。また、いまはまれですがビタミンCの欠乏によって起こる壊血病でも同様の症状があらわれます。出血に加えて貧血や動悸、息切れなどがともなうようであれば病院で診察を受けましょう。
鼻血の多くは、打撲や鼻腔粘膜の損傷、炎症、鼻のかみすぎなどによって起こります。通常は、ややうつむき加減で鼻先を強くつまめば数分で止血できますが、出血が頻繁なときは病院で診察を受けましょう。強い刺激がないのに鼻血が続くようなときは、白血病などの出血しやすい疾患や、高血圧症などが疑われます。
打ち身もないのに内出血によるあざができるときは、とくに注意が必要です。直径1ミリ程度の点状のあざがみられる血小板減少性紫斑病、内出血に加えて貧血や発熱をともなう白血病、広範囲にあざが発生したり関節や筋肉が腫れる血友病など、重大な血液の疾患が潜んでいる可能性があります。
白血病や血小板減少性紫斑病、シェーンライン‐ヘノッホ紫斑病では、消化器から出血をきたし、血尿や血便が起こることがあります。また、まれに女性では生理時に経血が増加したり、生理の期間が長くなることもあります。
白血病は、骨髄で正常な血液をつくることができなくなる疾患で、血液のがんとも呼ばれています。血を止める血小板が減少するために出血しやすくなり、さらにめまいや動悸をともなうような極度の貧血症状を引き起こします。また、白血球が減少して免疫力が低下するので、風邪などのウイルスや細菌に感染しやすくなります。
止血に重要な役割を果たす血小板が減少し、点状や斑状の内出血が多発する状態の総称です。鼻血や歯ぐきからの出血、さらには消化器からの出血による血尿や血便、生理時の経血増加などの症状もみられます。白血病や再生不良性貧血、放射線障害などが原因として明らかなものは続発性血小板減少性紫斑病といい、一方明らかな原因が認められないものを特発性血小板減少性紫斑病(ITP)といいます。
血友病は、血を止めるために働く凝固因子が生まれつき欠乏していることから起きる遺伝性の疾患で、男性にみられます。関節の中やお尻の筋肉の中、脳内など体の深いところで出血を起こして大きな血の塊を作るのが特徴です。膝やひじなど、関節の中で出血すると腫れあがり痛みを感じます。
小児によくみられる血管炎で、炎症を起こした血管から出血するためにあざや点状の内出血があらわれます。また、腸や腎臓の血管で出血すると血尿や血便がみられる他、腹痛や嘔吐などの症状もあらわれます。2週間ほどであざが消える場合は心配ありませんが腎炎を引き起こすことがあるので注意が必要です。
赤黒い血液がじわじわとしみ出るような出血は、傷口にガーゼやタオルを当ててその上から圧迫すると止血します。一方、鮮赤血が心臓の鼓動にあわせて吹き出すように出血しているときは、太い動脈を傷つけている可能性があります。その場合は、傷口の心臓に近い側をタオルなどで縛り、すぐに救急車を呼びましょう。
止血できない場合はもちろん、傷口が汚れていて化膿する可能性がある場合や、傷ついた部分に激しい痛みや麻痺を感じる場合は骨折の可能性があります。すみやかに外科か整形外科を受診しましょう。また、犬や猫などに噛まれた傷も細菌による化膿を防ぐために病院で処置を受けましょう。
しつこい鼻血が出たり、極度の貧血や内出血をともなう関節の腫れなどが続くときは、白血病などの出血しやすい疾患が疑われます。主治医や内科、血液を専門とする血液内科の診察を受けましょう。
けがの初期治療の基本として、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)という止血処置の手順があります。これがRICE(ライス)プロトコルです。ます、患部と全身を動かさずに休ませ、氷水でぬらしたタオルやアイスパックなどで傷口周辺を冷やします。その後、包帯などで傷口を圧迫し、心臓より高くなるよう患部を上にして止血しましょう。