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皮膚(全身) 湿疹(皮膚炎)
かゆみをともなう皮膚の炎症をまとめて湿疹といいます。急性では、水疱や発疹などのジクジクした湿疹をはじめ、角質が白くフケのようになる鱗屑(りんせつ)、かさぶたなどがみられます。慢性の湿疹では、皮膚がカサカサになり、厚く硬くなっていくことが特徴です。
油、洗剤、石鹸などの刺激の強いものに触れた直後や、特定のアレルギーを持つ人が原因物質に触れると、湿疹ができることがあります。アレルギーの原因物質は、化粧品やヘアケア製品の成分、貴金属、衣類、植物、洗剤など身の回りのほとんどのものが対象になります。
アレルギー体質の人は、摂取する食べ物で皮膚に湿疹があらわれることがあります。代表的な食べ物では、卵、大豆、牛乳、そば、さば、貝、山芋、ピーナッツなどです。新生児期や幼児期に多くあらわれ、3歳すぎごろにアレルギーがなくなることもありますが、そのままアレルギーを持ち続ける場合もあります。
皮膚のバリア機能が低下しやすい乾燥肌や、バリア機能が常に低下した状態の敏感肌は、刺激物質に影響されやすいものです。髪の毛先が顔に触れたり、下着による皮膚の圧迫などのちょっとした刺激でも湿疹ができることがあります。
高温多湿の環境は汗が出やすくなります。汗の量が増えていくと、皮膚にある汗の通り道や出口が詰まり、汗が体の外に排出されず周辺の組織を刺激して炎症反応が起きることがあります。?
カンジダ菌や水虫の原因となる白癬菌に感染すると、感染した部分に湿疹ができます。カンジダ菌は肌がこすれるわきの下や太もも、白癬菌は足の指と指の間での感染が多くみられます。カンジダ菌は人の唾液や消化器に存在し、基本的には人の健康に影響を与えません。しかし、体力が落ちると必要以上に増殖して、湿疹のような不快な症状を引き起こします。
蚊(か)、ノミ、ダニ、ブユ(地域によってはブヨ、ブト)、ケムシなどの昆虫に皮膚を刺され、毒性のある物質が体の中に入ることで、湿疹ができます。刺された部分が赤く盛り上がることが多く、とくにケムシは背中の毒針で一気に刺してくるので、広い範囲に湿疹が広がります。
ハウスダストや食べ物などの原因物質によって引き起こされるアレルギー疾患です。乳幼児期では、顔や頭、耳などの皮膚がジクジクして赤く腫れ、小児期以降では皮膚がカサカサに乾き、硬くなります。強いかゆみをともなうため、かくことで細菌に感染して悪化することがあります。思春期ごろに治まる人が多いのですが、成人以降も続くと慢性化することがあります。
食べ物をはじめ、薬や植物などが原因として挙げられています。その食物を食べたり、植物に触れたりすることで皮膚が反応して赤く盛り上がり、強いかゆみを引き起こします。皮膚の赤い盛り上がりは直径数ミリのものから、広範囲の地図状に広がるものまであり、ほとんどの場合数分から数時間で消え、しばらく時間をおいてからまたあらわれることがあります。
カビの一種である白癬菌が足の裏や手について感染すると水虫、体の表面や頭皮などに入りこみ感染すると白癬症と呼ばれます。足の裏では小さな水泡ができたり、指と指の間が赤くなり、皮がむけ白くふやけたりして、強いかゆみをともないます。手では手のひらの皮が厚く硬くなり、皮がむけ、ひび割れてくるので、手湿疹や手荒れと勘違いすることも少なくありません。体にも赤いブツブツや赤い輪があらわれることも多くあり、頭皮では毛穴が赤くなって腫れ、患部の毛が抜けることもあります。
特定の物質に触れたことで起こる皮膚炎のことです。赤ちゃんのいる家庭では一番身近なのが、オムツかぶれです。これは尿や便のアンモニアが原因となる刺激性接触性皮膚炎で、触れてから数時間後に炎症を起こします。その他、油や洗剤、石鹸などでも起こる場合があります。これとは別に、アレルギー物質に触れることで炎症を起こすアレルギー性皮膚炎があります。貴金属や化粧品、うるしやぎんなんなどに触れることで接触しなかった部位も含めて皮膚が赤くなり、ブツブツや水疱ができたりするもので、かゆみの強いものと、ないものがあります。
水や石けん、洗剤の刺激などによって起こる手あれのことです。主な症状は、肌の乾燥や小さなブツブツの発疹、ひび割れなどです。きき手の親指や人差し指、中指などよく使うところから症状があらわれ、手のひら全体に広がっていきます。水仕事の多い主婦に多くみられるため、主婦湿疹とも呼ばれています。
皮脂の分泌異常や細菌感染などが原因で起こります。主に皮脂の分泌が盛んな頭や顔、胸、脇の下が赤くなり、粉が吹いたような状態になりますが、かゆみはそれほど強くありません。頭の場合にはカサカサになった大きなフケが頭皮に大量に発生し、頭の臭いが強くなることもあるので、洗髪不足と誤解してしまうことも少なくありません。顔の場合には、脂ぎった顔、あるいは粉を吹いたようなバサバサの赤ら顔になります。
汗腺の出口が詰まり、汗腺の出口とその周辺に汗が溜まって起きる炎症です。多くは赤みを帯びた小さな発疹ができます。汗をかきやすい額やわきの下、ひじや膝の裏側に多くみられます。汗をかきやすい夏はもちろん、熱すぎる暖房や厚着などによって、冬にもみられます。乳幼児に多い疾患ですが、大人にもできることがあります。
肌が乾燥するとバリア機能が落ちるため、洗顔やお風呂の後には化粧水と保湿剤で皮膚の水分を保つようにしましょう。また、加湿器で部屋の湿度を保つことも効果があります。とくに手は新陳代謝が悪く、乾燥しやすいデリケートな部分です。水仕事の後はハンドクリームを手全体にまんべんなく塗っておきましょう。
かいた汗をそのままにしておくと、皮膚に刺激を与えることになります。汗をかいたらこまめにふいたり、可能であればシャワーを浴びましょう。汗を拭くときは、濡れたタオルやウェットティッシュを使うと汗に含まれる細菌もふき取ることができます。
水虫は、足が蒸れて通気性が悪い状態や、水虫の原因である白癬菌に汚染されている床や履物を介して感染します。しかし、24時間以内にしっかりと足を洗えば白癬菌の感染を防ぐことができます。石けんで足の指の1本1本まで丁寧に洗い、白癬菌を撃退しましょう。
食物アレルギーであることがはっきりしている場合は原因となる食品を制限しますが、素人判断で食事制限をすると、成長期では必要な栄養素やカロリーが不足するおそれがあります。医師の指示に従うようにしましょう。また、外食などでは、避けるべきアレルギーの原因物質が入っていないと思われるメニューでも、同じ器具を使って調理されていると、その成分が器具に残っていることがあります。不安な要素があればお店の人に確認しましょう。
特定の薬品や金属など、アレルギーの原因となる物質がわかっているときは、その物質を避けるようにしましょう。
かくことによって皮膚のバリア機能が壊れ、細菌やアレルギー原因物質が入りやすくなります。かくとさらにかゆみが増すばかりか、皮膚が傷つき化膿することもありますので、かかないことが大切です。かゆみが強いときは、冷やしましょう。冷たいおしぼりか、氷を入れたビニール袋や保冷剤をハンカチなどでくるんで、かゆいところに当てると楽になります。
白癬菌は、皮膚の奥深くに入り込むため完治に時間がかかります。症状が改善したと思って治療を止めてしまうと、すぐに再発することがあります。そしてまた治療し、再発するということを繰り返しているうちに慢性化してしまうこともありますので、症状が消えてもその後1ヵ月は根気強く治療を続けましょう。
手袋の着用で水や洗剤の刺激を緩和すると、手湿疹の悪化を防ぐことができます。ただし、ゴムやビニールの手袋を直接はめると、それ自体が刺激になってしまいますから、下に木綿の手袋を着用するなどの工夫をするようにしましょう。
湿疹があらわれたら、かゆみを緩和する市販の軟膏やクリームを使ってみましょう。水虫には白癬菌を破壊する塩酸ブテナフィン配合の外用薬が効果的です。水虫の薬は、毎日欠かさず、かゆみや赤みのある患部よりも広く薄く塗ることがポイントです。
湿疹が長い期間治まらない場合は、主治医に相談するか皮膚科で診察を受けましょう。アトピー性皮膚炎の疑いがあるときは、皮膚科やアレルギー科などを受診しましょう。子どもの場合はまず小児科へ。小児科をベースにしたアレルギー専門医ならさらに詳しく相談に乗ってくれます。
アレルギー疾患にかかりやすい乳幼児がアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などを次々と発症していくのが「アレルギーマーチ」です。 乳幼児期は、まず食物を原因とするアトピー性皮膚炎を発症しやすいのですが、成長するにつれてハウスダストや花粉を吸い込む機会が増え、気管支喘息やアレルギー性鼻炎が起こるようになります。子どもが幼いうちは、食事やダニの除去にはとくに気を配ってあげましょう。