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胸・肺 脈拍の異常
心臓は、全身の動脈へ血液を送り出すために規則的に収縮したり、全身の静脈から心臓に血液を取り込むために拡張したりしています。この動きを心拍動といい、1分間に60~80回ほど繰り返します。心拍動が手首などの動脈に伝わり、脈拍として感じられます。心拍動が標準値(1分間に60~100回程度)よりも多すぎたり、少なすぎたり、またはリズムが乱れて脈拍が乱れる状態を不整脈といいます。
緊張したり、興奮すると、自律神経の一つで活動の神経といわれる交感神経が優位に働きます。これによって、心臓を動かす信号がたくさん発信され、心臓がドキドキして脈拍が早くなります。他にも、同じ理由から精神的なストレスを強くうけたり、激しい運動や入浴後などには脈拍が早くなります。
寝入りばなや睡眠中、起床時は、自律神経の一つであり、リラックス状態をつくる副交感神経が優位に働きます。このため、心臓の拍動がゆったりとなり、脈拍が減少します。通常の変動では、ほとんど問題はありませんが、脈拍が少なくなりすぎると心臓から体内に送られる血液量が減少して慢性的な酸欠状態になり、めまいや失神が起こるなど危険な状態に陥ることがあります。
脈拍の異常で多いのは、脈が1回抜けるように感じたりドックンと強く打つように感じる、いわゆる「脈が飛ぶ」という症状です。睡眠不足や過労、飲酒などで自律神経のバランスが乱れると起こりやすくなります。脈が飛ぶのが1分間の通常脈拍数の1割以下なら問題ありませんが、長く続いたり、多発するときは注意が必要です。
脈拍は、主に心臓の働きに左右されるため、異常があるときは心筋梗塞、狭心症、心房細動、心筋症、心筋炎や心臓弁膜症などの心臓の疾患を疑う必要があります。また、貧血、更年期障害、自律神経失調症、バセドウ病などでも脈拍に異常が生じることがあります。
心筋梗塞は、心臓の筋肉に血液を送り込む冠動脈が狭くなり、そこを血液が固まってできる血栓がふさいで血流が完全に止まってしまう状態です。心筋の一部が壊死してしまうことから、死に至ることもあります。脈拍の異常や強い動悸をはじめ、胸やみぞおちに激痛が起こり、吐き気や冷や汗などもみられ、胸の痛みは30分から数時間続きます。主な原因は動脈硬化ですが、これに高血圧や糖尿病、肥満、喫煙などが重なるとリスクが高まります。
心臓の筋肉に血液を送り込む冠動脈という血管の内腔が動脈硬化で狭くなり、血流が不足しやすい状態に陥ります。そのために階段の昇降時や寒い日などに、一時的に(数分程度)酸素が不足して、胸の痛みや脈拍の異常、息苦しい発作を起こします。
心臓の上方をしめる薄い筋肉でできた心房が、異常な刺激で不規則に震え、心臓が正しく収縮できない状態です。拍動、脈拍の異常、強い動悸や息苦しさなどがあり、放置すると心不全や脳梗塞を引き起こし、死に至ることもあります。心臓に疾患がある人に多いのですが、健康な人でも睡眠不足や過労、飲酒、喫煙などがきっかけで起こることがあります。年齢とともに増える傾向があります。
心筋症とは、なんらかの原因で、心臓の筋肉(心筋)の状態が悪くなって心臓の機能が低下する疾患です。心筋が極端に厚くなる心肥大型心筋症と、心筋が薄くなって心臓が拡張する拡張型心筋症に分けられます。いずれも、心臓のポンプ機能が低下して心不全症状を引き起こしたり、脈拍の異常や胸部の圧迫感、疲れやすいなどの症状があらわれます。放置すると突然死に繋がることもあります。
インフルエンザなどのウイルスが心臓の筋肉(心筋)に感染し、炎症を起こす病気です。発熱や頭痛など風邪のような症状とともに、頻脈など脈拍の異常が起こります。発熱や筋肉痛など風邪のような症状があらわれ、軽症で治るケースもあれば、動悸や息切れ、むくみなどが起こり重症化する例もあります。
心臓にある4つの弁のどれかが十分開かなくなったり、閉まらなくなったりして働きが損なわれると、脈拍の異常が起こり、動悸や息切れ、胸の痛みなどが起こります。しかし、症状はジワジワと進行していくため、自覚症状がない場合も多くあります。先天性のものや、菌の感染により全身に炎症が起こるリウマチ熱などによるもの、また加齢にともなって動脈硬化と同じような変化が起こり、心臓の弁が硬くなって動きにくくなるといったこともあります。
心臓の拍動は、心房から心室への電気的な刺激の伝達によって規則的に心臓の筋肉が拡張と収縮を繰り返します。しかし、心房と心室への通り道に障害が起こると、心室に刺激が十分に伝わらず、拍動が遅くなります。重症化すると、心室へ刺激がまったく伝わらなくなり、心臓から脳への血液供給が減少し、失神することもあります。この場合は、心臓にペースメーカーを埋め込む必要があります。
鉄分の不足などが原因で、酸素と結合して酸素を体のすみずみまで運ぶヘモグロビンが減少し、血液中の濃度が薄くなった状態です。ヘモグロビンの数値が男性は13.0g/dl以下、女性は12.0g/dl以下になると、貧血とされています。全身に血を送ろうとするために心臓が活発に活動するので、ちょっとした動作でも脈が速くなったり、動悸が起こる他、冷え、倦怠感、立ちくらみ、耳鳴り、頭痛などの症状が起こります。
ストレスなどが原因で自律神経が乱れ、心や体に不調があらわれた状態です。不安や緊張、抑うつなどの心のトラブルにより、心拍数が早くなってドキドキしたり、逆に、朝起きても心拍数が上がらずにずっと体がだるい状態が続いたり、うまくコントロールができなくなります。他に、吐き気をはじめ多汗、全身の倦怠感、頭痛、肩こり、手足のしびれ、めまい、不眠など、人によってさまざまな症状があらわれます。
全身の代謝をコントロールする甲状腺ホルモンの過剰分泌によって、全身のエネルギー代謝が異常に高まる病気です。20代~30代の女性に多く、心拍数が多くなる頻脈、動悸、のどぼとけ下にある甲状腺の腫れ、眼球突出が、主な症状です。その他、手のふるえ、息切れ、不眠、生理不順や無月経、発汗、体重減少などの症状もみられます。
閉経の前後、約10年間の更年期を迎えると、女性ホルモンのバランスが急激に変化し、心や体にさまざまなトラブルを引き起こします。更年期に起こる女性ホルモンの減少により自律神経のバランスが乱れ、脈拍に異常を起こすことがあります。その他、疲れやだるさ、肩こり、のぼせやほてり、イライラや不安感などの症状があらわれます。
脈拍の異常は、心配のないものも少なくありませんが、中には心臓の病気などが隠れていることがあります。自覚症状がある場合は、主治医や、循環器内科などの専門医で診察を受けましょう。また、自覚症状がなくても40歳を超えたら健康診断などで心電図検査を受けて、心臓の動きのチェックをすることが大切です。
脈拍は、心拍動が血管に伝わった現象です。正常な状態では、脈拍と心拍は一致しており、心拍が早くなると頻脈に、心拍が遅くなると除脈として感じられます。心臓の拍動が不規則になる脈拍も、不規則な間隔で検知されます。また心房細動、心室期外収縮などで、心臓から送り出される血液が不十分な場合は、脈拍が欠落し、不規則な脈拍として感じられます。これらが不整脈といわれるものです。動悸と不整脈は同じ症状ではありませんが、不整脈が起きたときに動悸を感じることが多いものです。