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足 痛風
痛風は、血液中の過剰な尿酸が体の組織に移行して結晶化し、関節などに溜まって炎症を起こす疾患です。尿酸は、細胞核の代謝の過程で生成したプリン体が、さらに分解されてできる老廃物です。尿酸は通常、尿や便として排泄されますが、つくられすぎたり、うまく排泄できないと、体の組織にたまり、結晶化して炎症を起こします。
ストレスと痛風は密接な関係があります。心身の緊張状態が続くとエネルギー消費が多くなり、尿酸が過剰につくりだされるとともに、ストレスによってホルモンの分泌が変化することで、腎臓から尿酸が排泄されにくくなると考えられます。そのため、痛風は仕事や家庭における責任の重い30~50代の男性に最も多く発症します。
尿酸は、食事に含まれるプリン体からも生成されます。プリン体はほとんどの食品に含まれ、なかでもレバーなどの内臓、魚卵、貝類、ビールなどに多量に含まれます。体内に入ると多くが腸管内で分解されますが、食べすぎると尿酸が増えるのを助長して痛風を招きます。
肥満はさまざまな生活習慣病の危険因子ですが、痛風とも密接に関係しています。肥満になると、尿酸の排泄が低下したり、肥満を引き起こす過食や運動不足がプリン体の産生を促すため、尿酸値が上昇しやすくなります。また、体内に内臓脂肪が蓄積されると、脂肪細胞から分泌されるさまざまな悪い物質が血圧や血糖値を上げ、痛風に合併しやすい高血圧症や糖尿病などを誘因します。
尿酸の原料となるプリン体は、ATPというエネルギーの発生源となる物質にも含まれていますが、筋肉を酷使したり、全力で走り回るような激しい無酸素運動によってこのATPが急激に分解されると尿酸値が上昇します。また、激しい無酸素運動により疲労物質である乳酸が体内に溜まると、尿酸の排泄機能が低下します。このため、プロのスポーツ選手などには痛風の発作を起こす人が多くみられます。
遺伝の影響が強い疾患で、縁者に痛風の人がいる場合は注意が必要です。痛風の発症と性格は密接な関係があり、積極的、活動的、指導力がある、自己主張が強い、他人に対して攻撃的などの性格をもち、つねにストレスを抱えている人が痛風になりやすいといわれています。健康診断などで高尿酸血症を指摘された場合も注意が必要です。
高尿酸血症は自覚症状がほとんどないため、知らないうちに進行し、ある日突然痛風の発作が起こります。しかし誰でもいきなり痛風になるわけではありません。尿酸の排泄が滞り尿酸が過剰な状態が、痛風予備軍といわれる高尿酸血症です。痛風発作のほとんどは高尿酸血症の人に起こります。健康診断で尿酸値が高めの人や肥満と診断された人は、痛風になりやすいので要注意です。また、糖尿病や脂質異常症、高血圧症なども痛風の危険因子となります。
初めての発作は、6~7割の人が足の親指のつけ根の関節に起こります。発作は夜明け前や早朝に突然起こることが多く、痛みは24時間以内にピークに達し、患部は熱を持って赤く腫れます。発作のときの痛みは一カ所の関節だけで、2週間くらいで治まりますが、放置しておくと多くの場合、最初の発作から1~2年後に再発します。尿酸値が7.0mg/dl以上になると高尿酸血症と診断されます。
高尿酸血症を放置しておくと、尿酸が増え続け、体のあちらこちらに尿酸の結晶が溜まってコブができます。これが痛風結節で、手足の関節付近や耳たぶなど比較的体温の低い部位にあらわれます。結節部に痛みは起こりませんが、関節が変形して自由に動かなくなることがあります。
腎臓でつくられた尿は尿管、膀胱、尿道からなる尿路を通って排泄されます。尿の中の尿酸が多くなりすぎると結晶化して、尿路に結石ができてしまうことがあり、痛風患者の10~30%にみられます。腹部の左右どちらかに起こる激しい腹痛と血尿が特徴で、腰や背中が痛むこともあります。
血液中の尿酸は腎臓を通じて尿中に排泄されますが、尿中の尿酸が増え、結晶化して腎臓に溜まると、腎臓の機能が低下します。異常なのどの渇きや、頻尿などの症状があらわれることがあり、進行すると腎臓の機能が失われる腎不全を起こし、命にかかわる場合があります。糖尿病や高血圧症などを併発していると、腎障害が促進され、また、腎障害によって高血圧症や動脈硬化、心臓や脳の血管障害を起こすことがあります。
ストレスは痛風の大敵です。真面目で、何事も深刻に受け止める人ほどストレスを溜めやすいので、できるだけ肩の力を抜き、楽天的な考え方をしましょう。また、散歩や軽いスポーツ、旅行、音楽鑑賞、ガーデニング、友人と愚痴をこぼし合うなど、自分に合ったストレス解消法を生活に取り入れ、ストレスを溜めないようにすることが大切です。
肥満の人は体重を減らすと尿酸値も下がります。摂取カロリーを1日1600~1800kcalに抑え、栄養バランスのとれた食事を規則正しくとることが大切です。また、早食いは食べすぎになりやすいので、食事に30分以上かけると、食べすぎを防ぐことができます。食事制限と適度な運動を続け、1カ月に1~2キロ程度の減量を目指しましょう。
レバー類やイワシ、アジなどの背青魚、白子、カツオブシなどプリン体を多く含む食品を食べすぎないようにしましょう。鍋物やすき焼きの煮汁などにはプリン体が溶け出しているので要注意です。アルコールは尿酸の排泄を低下させたり、尿酸を増やす作用があり、とくにビールはワインの14倍、日本酒の4.5倍ものプリン体を含みますので、控えましょう。また、尿酸値の高めの人は高血圧を合併しやすいので、すでに尿酸値が高い人は塩分を1日8g以下に抑えましょう。
軽い有酸素運動には、減量効果とともに尿酸値を下げる効果があるといわれています。ウォーキングやサイクリング、ジョギング、エアロビクス、水泳など、1人でもできて無理なく続けられる運動を選びましょう。また、汗をたくさんかくと体内の水分が失われ、血中の尿酸値が上昇します。激しい運動を避けるとともに、汗をかいたら水分をこまめに補給することが大切です。
尿酸値が7.0mg/dl以上になると高尿酸血症と診断され、8.0mg/dlを超えると痛風発作の危険が高まります。自覚症状がほとんどあらわれない無症候高尿酸血症が近年急増していますので、痛風を予防するためには、健康診断や人間ドックなどで定期的に血中の尿酸値を検査し、高尿酸血症を早期に発見することが大切です。
痛風発作が起きたときは、炎症を抑えるために、患部を冷却湿布薬や水・氷などで冷やして安静にしましょう。患部を心臓より高い位置に上げて冷やすと効果的です。痛みや腫れが強くあらわれている間は、仕事を休み安静にしていることが一番です。そしてなるべく早く医師の診察を受けましょう。
水分を十分にとり尿の量を増やすと、尿とともに体外に排泄される尿酸の量が増えます。また、腎臓内に尿酸が溜まるのを防ぐこともできますので、高尿酸血症や痛風の発作を起こしたことのある人は、1日最低1.5リットルは水分をとるように心がけましょう。水分補給は水かお茶にし、砂糖入りのコーヒーや紅茶、アルコール、ジュースなどは避けましょう。
血中尿酸値が高いと血中から尿中に排泄される尿酸が増え、尿中の過剰な尿酸は、尿が酸性になっていると結晶化し、尿管結石の原因になります。尿をアルカリ性にするために野菜を積極的にとり入れるよう心がけましょう。
痛風が疑われる場合は、ただちに専門医を受診しましょう。最近、大きな病院では痛風・膠原病・リウマチ科や内分泌代謝科などを設け、痛風の専門医が治療にあたっているところが増えています。専門の病院がわからないときや近くにないときは、内科を受診しましょう。
痛風はかつて中年男性の病気といわれ、女性がなることはまれでした。これは、女性の尿酸値が男性の3分の2程度しかないためで、女性ホルモンが尿酸の産生を抑えていると考えられています。しかし、閉経を迎えると、女性ホルモンの分泌が減少するので尿酸の量が増え、さらに、肥満や過食、運動不足、社会進出によるストレスの増加などによって、近年は女性でも痛風になる人が増えています。また、食生活の欧米化やファストフードの過食、不規則な食生活に加えて、過剰なストレスなどによって、若い世代にも痛風患者が急増しています。いまや痛風はぜいたく病ではなく、誰もがかかる危険性の高い生活習慣病です。