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目 花粉症
スギやブタクサなどの特定の花粉が鼻やのど、目の粘膜についたときにアレルギー反応が起こり、くしゃみ、鼻水、鼻づまりや目のかゆみなどの症状を起こすのが花粉症です。症状が重くなると、皮膚のかゆみや頭が重い、だるさや不眠、集中力の低下など、全身にさまざまな症状があらわれることがあります。
日本で最も多い原因は、約8割をしめるスギ花粉です。九州では2月上旬、関東では2月中旬、東北地方では3月上旬から中旬に飛散し始めることが多く、約2カ月間続きます。花粉は、日中、晴れた日に多く飛散します。しかし、近年飛散量が増えているヒノキ科の花粉がスギ花粉より1カ月から1カ月半遅れて飛散するので、症状が長引く場合はヒノキ花粉症を併発している可能性があります。
北海道にスギは少ないので、スギ花粉症はほとんどありませんが、4月から6月にかけてシラカバやハンノキなどのカバノキ科の花粉が飛散し花粉症を引き起こします。近畿地方ではカバノキ科のヤシャブシが多く植林され、ヤシャブシ花粉症が問題になっています。花粉は1月から4月にかけて飛散します。
花粉症の原因となるイネ科の植物の代表はカモガヤです。全国いたるところの道端、空き地、土手、河川敷など身近な場所に繁殖し、5月から8月ぐらいまで花粉を飛ばします。
第二次世界大戦後、アメリカから大量に入ってきたブタクサは花粉症の原因としてよく知られていますが、空き地の減少や積極的な刈り取りにより少なくなっています。飛散時期は8月から9月。ヨモギによる花粉症もブタクサと同じくらいみられ、シーズンはブタクサより半月程度遅れます。
花粉症のくしゃみは発作のように連続して起こり、回数が多いのが特徴です。風邪の場合は長くても1週間程度で治まりますが、花粉症の場合はシーズン中続きます。鼻水は水のようにサラサラして、風邪のときのように粘り気がある黄色い鼻水にはなりません。鼻づまりや目のかゆみも強く出ます。
花粉がのどから気管に入ると、たんの出ない乾いたせきが続くことがあります。重症の場合は、気管支の粘膜が腫れ、のどの痛みや呼吸困難が起こることもあります。皮膚に花粉がつくことで肌が荒れたり、耳の中に花粉が入ることで耳にかゆみが起きることもあります。花粉症の症状が重いと、ぼーっとして熱っぽい、だるく倦怠感がある、頭が重いといった全身症状をともなう場合もあります。
晴れて風が強い日中は花粉がたくさん飛びます。とくに飛散のピークとなる昼前から午後3時ごろの時間帯はなるべく外出を控えましょう。外出時はマスクをし、メガネやゴーグル、帽子を着用します。ニットの服は花粉がつきやすいので、花粉の季節は、スベスベした素材の服を選んで着るようにしましょう。
外出から戻ったときは、家に入る前に玄関先で服などについた花粉を払い落としましょう。また、すぐに手や顔、目、鼻を洗い、うがいをすることが大切です。洗濯物はできるだけ乾燥機を利用するか部屋干しで。布団を外に干したときは、よく花粉を払い落としてから取り込み、さらに掃除機をかけて残った花粉を吸引しましょう。
晴れて風が強い日中は、窓やドアをできるだけ閉めておきましょう。室内に漂っている花粉を取り除くには、空気清浄機が効果的です。掃除をするときは花粉を舞い上げないことが大切なので、床や畳は拭き掃除をしてから掃除機をかけます。ソファやカーテンも念入りに掃除機をかけ、仕上げに家具を濡れた雑巾で拭きましょう。
花粉が飛び始める時期や量、花粉の多い日や地域、時間帯などの情報は日本気象協会などのホームページやテレビ、新聞、インターネットなどさまざまなメディアから手に入れることができます。外出の計画などに役立てて、花粉から身を守りましょう。
イネ科やブタクサなどの雑草の花粉は、スギ花粉が数十~数百キロメートル先にも飛散するのに対し、数キロメートル以内にしか飛散しません。原因となる雑草が茂っている場所がわかれば、自分で刈り取る、土地の所有者に願い出る、河川敷などの場合は所轄の官庁に働きかけるなどして、原因の植物を刈り取ることができれば確実に効果が出ます。
マスクをして保湿、保温することで症状が緩和されます。さらに、マスクは鼻の中に入る花粉の量も減らしてくれるので、花粉症の時期には欠かせないアイテムです。
目のかゆみが強いときは、清潔なタオルで冷たいおしぼりをつくり、まぶたの上に置くと楽になります。
疲労は自律神経を過敏にし、アレルギー反応を起こしやすくします。睡眠を十分にとり、ストレスを溜めないようにしましょう。また、お酒やタバコ、香辛料などは鼻の粘膜を刺激して、花粉症の症状を悪化させます。できるだけ控えましょう。
アレルギーに負けない体をつくるには、栄養バランスの良い食事をとるように心がけるのが一番大切です。とくに肉中心の高たんぱく質な食事は、アレルギー反応を悪化させるといわれているので注意しましょう。また、乳酸菌は花粉症の症状緩和に効果があるともいわれています。
アレルギー症状を引き起こすヒスタミンの働きや粘膜の炎症を抑える内服薬で、鼻の症状やのどの痛みを緩和することができます。スプレータイプの点鼻薬や目のかゆみ、充血を緩和する点眼薬もありますので、薬剤師や登録販売者に相談のうえ、自分に合った薬を選びましょう。
毎年一定の時期にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が出る場合は、花粉症の可能性があります。耳鼻咽喉科やアレルギー科で診察を受けましょう。ただし、とくに目の症状がつらい場合は眼科、皮膚症状なら皮膚科、せきや全身症状のある場合は内科など、症状に応じて診療科を選ぶことが必要な場合もあります。
鼻の粘膜についた花粉の数を比較した実験によると、普通のマスクをしたときではマスクをしないときの約3分の1、花粉症用マスクでは約6分の1という結果が出ています(日本医科大学耳鼻咽喉科調べ)。ただし、花粉症用マスクでも大きすぎると顔とマスクの間にすき間ができ、花粉が入りこんでしまいますから、マスクを選ぶときは自分の顔に合った大きさのものを選びましょう。