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全身 脱臼(だっきゅう)
関節がはずれて、骨の位置が関節からずれてしまった状態が脱臼です。脱臼には疾患によるものと、衝撃などの外傷によるものがありますが、外傷性の脱臼では自分では動かせないほどの痛みと関節の変形が生じます。医師の処置ですぐに骨を元の関節の位置に戻し、1~2週間固定するとほとんどは回復しますが、治療をしないで放置していたり、骨折をともなうときは手術が必要になることもあります。
転倒や衝突による衝撃などの外傷で、関節に大きな力がかかると脱臼することがあります。最も脱臼しやすいのは、肩関節です。スポーツをしている最中に転倒して腕を伸ばして手をついたときや、ボールを投げたりラケットを振ったり、大きく肩を動かしたときなどによく起こります。肩以外では、あごやひじ、指など、よく動かす部分にみられます。
幼児期の骨髄炎や関節炎では、炎症によって毛細血管などから分泌される滲出(しんしゅつ)液が関節を覆う関節包に溜まることで、関節包が広がって脱臼が起こることがあります。また、ポリオなどの神経麻痺や脳性麻痺によっても脱臼を引き起こすことがあります。その他、生まれつき大腿骨を支える骨盤側のくぼみの形が悪いと股関節の脱臼を起こしやすくなります。
外傷性の脱臼の場合、ガクッという音とともに関節が変形します。また、関節周囲のじん帯なども損傷するため、激しい痛みと腫れが生じます。さらに、本来の関節の動きが制限されます。関節に骨折をともなうこともありますが、脱臼だけでも関節の変形が起こりますから外見上はわからない場合もあります。
幼児期にみられる股関節の脱臼では、膝を曲げた状態で開脚をすると開きが悪かったり、ポキポキやクリッという股関節がはずれたりはまったりする雑音や感触があります。また、両足を伸ばして比べたときに左右で長さや太ももやおしりのしわの数が違う場合は、片側の足だけが脱臼している可能性があります。これらはとくに女児に多くみられ、男児の5~8倍の頻度で起こるとされています。
見た目は単純な脱臼に見えても、剥離(はくり)骨折をともなっていることがよくあります。むやみに引っ張って元に戻すようなことはしないで、早急に整形外科を受診するのが原則です。無理に引っ張ることによって欠けた一部の骨がずれたり、じん帯を痛めたりすることがあります。脱臼は早急に整復しておかないと重篤な後遺症が残ることがあります。まずは迅速に受診して骨や関節のずれ方や脱臼に骨折がともなっていないかレントゲンで確認することが重要です。
乳幼児の股関節の脱臼の場合、痛みはありませんが治療しておかないと関節が変形し、痛みや歩行困難を起こすおそれがあります。一般的には生後3ヶ月の健診で診断されますが、おむつ替えのときなどで異変に気付いたときには小児科または整形外科で治療を受けるようにしましょう。
肩やあごを脱臼すると、その後日常生活の動作などの小さな力でも脱臼を繰り返すことがあります。これは、痛みがなくなったからといって、自己判断で三角巾を外して運動を始めたりすることによる、不完全な治療が原因で起こります。一度脱臼がくせになると、手術以外には治す手だてがありませんから、必ず医師の指示に従うようにしましょう。