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肩 四十肩・五十肩
肩関節周辺の組織に変性が起こり、生じた炎症によって痛みが起こる「肩関節周囲炎」のことです。40代以降に発症することが多く、一般的に四十肩・五十肩といいます。突然痛みが発生する急性期と、肩の動きが制限される慢性期があります。半年から1年半ほどで自然に痛みが軽くなり、肩が動かせるようになります。
年齢とともに、肩の部分にある関節を覆う膜や骨同士を結びつける靱帯の柔軟性が低下することで起こると考えられています。また、上腕部の筋肉と骨をつなぐ腱板(けんばん)が加齢にともない変性し、炎症を起こすことも原因となります。
ある日突然、腕を動かしたときに肩に鋭い痛みが発生するのが四十肩・五十肩の典型的な発症パターンです。ほとんどが片側の肩のみに症状があらわれます。その後、肩を動かすときに、痛みが二の腕や手先に伝わるようになります。しびれをともなうこともあり、眠れないほどの痛みが生じることも少なくありません。これは肩関節の炎症によるもので、急激な痛みは、数日間で治まります。
急性期の痛みが治まるとともに、鋭い痛みから鈍い痛みへと変化し、肩を動かせる範囲がだんだん狭くなっていくことがあります。とくに肩を上げたり、後ろに回す動きが困難になります。これを拘縮(こうしゅく)といいます。痛みのために、肩の筋肉を動かさないでいると、組織の癒着が起こり、さらに動かなくなって治癒が長引きます。
①肩をすくめて戻す、②両腕を前からまっすぐ上げて耳の横につけておろす、③右腕を胸に引き寄せ右ひじをアゴの前辺りで左手で押さえる、同じように逆も行う、④肩を前に10回、後ろに10回まわす――といった運動で、普段から肩のストレッチを行うようにしましょう。
急性期には、無理して肩を動かさないようにしましょう。重い荷物を持ったり、運動をするなど、痛みをともなう動作は避けるようにしましょう。発病4~5日後からの慢性期への移行期間と、その後の慢性期は逆に、日常動作を積極的に行うようにしましょう。
慢性期では、振り子運動が有効です。痛くないほうの手で机にもたれかかり、ペットボトルやアイロンなど500gから1kgくらいの重さのものを痛い方の手で持って腰をかがめて前後、左右にゆっくり振ります。手に持ったものの重みで、肩の周りの腱が伸びて楽になります。
最も楽に寝られる姿勢を取りましょう。枕は首の骨が自然なカーブを保てる高さにします。寝ている間に肩が冷えると痛みが起こることがあります。布団から肩が出ないように、サポーターを使用したり、バスタオルや毛布を掛けるなど工夫をしましょう。
そでや腕回りがゆったりとした衣類を選びましょう。また、急性期ではかぶるシャツや後ろにファスナーがある衣類を避け、体の前面で開くものを選びましょう。着るときは痛いほうの腕から先に袖を通し、脱ぐときは逆に、痛くない腕から脱ぐと良いでしょう。
カイロや温感湿布を当てたり、サポーターを付けるなどして、肩を冷やさないようにします。ぬるめのお湯でしっかり温まる入浴法も有効です。ただし、急性期で冷やしたほうが痛みがやわらいだり、楽と感じる場合は、氷のうなどで15分ぐらい冷やすのもいいでしょう。
痛みが強い場合は、市販の鎮痛消炎成分インドメタシンなどが配合された貼り薬を使うのも良いでしょう。貼り薬は冷感タイプと温感タイプがありますが、とくにこだわらず、自分が気持ちが良いと思う方を選びましょう。痛みが強い場合は、消炎鎮痛剤(飲み薬)を使用するのも良いでしょう。また、ビタミンB、B、Bが配合されたビタミン剤は、体の中からこりを緩和する効果があります。
四十肩・五十肩だと思っていたら、肩の筋肉と骨をつないでいる腱板が部分的、あるいは完全に断裂する腱板断裂のケースもあります。腱板断裂は、四十肩・五十肩とは違い、自然に治りにくく、放置すると痛みがひどくなります。原因を見極めるためにも、整形外科を受診するようにしましょう。
肩関節周囲炎は、「五十肩」という呼び方が広く知られていますが、実際には40歳代から60歳代まで幅広い層でみられます。最近では、「四十肩」という呼び方をされることもありますが、五十肩と同じ肩関節の周囲に炎症が起こることをいいます。若くして発症するケースが多くなって、呼び方も若返ってきているようです。